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世界中で小売業の回復を妨げている障害は何か?

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9月 10 2021

回復の年となるはずだった一年の中ほどまで来て、一部の小売業者はまだ不振にあえいでいます。データ品質の向上が、成功への鍵となる可能性があります。

2020年の春以降、小売業における変化の速さは、世界が記憶しているところです。かつてない速さで 生活必需品を店舗に補充する必要が生じ、これには並外れた努力とチームワークが必要となりました。小売業者は、安全な店内環境を構築したり、接客業務に関わらない従業員を在宅勤務に移行させたり、より一層デジタル化したアプローチを通じてお客様とコミュニケーションを取り、サービスを提供する方法を導入したりと、迅速な業務変革を実行しました。

多くの小売業者は回復に向かっていますが、一方で従業員不足やサプライチェーンの課題などの新たな障害が浮上しています。これらの課題に対応するには、新しい考え方が必要です。そこを掘り下げる前にまず、小売業者が回復のために何をしてきたかを見てみましょう。

What Obstacles Are Impacting the Global Retail Recovery

回復への道

2021年初頭に発表されたEuromonitorの報告によると、小売業者の93%が、パンデミックは自社のデジタル化計画を1年以上前倒ししたと述べました。このデジタル化の進展には大きなメリットがありました。パンデミックの前あるいは最中にデジタルトランスフォーメーションの取り組みを加速し、その過程でデジタル成熟度を高めていた小売業者は今、取り組みを進めようとしている他の小売業者よりも迅速に適応し、新たな障害に対応し、パフォーマンスを向上させる可能性が高くなっています。

これは驚くことではありません。今年初めに#NRF2021に参加した時私たちは、小売業者が過去1年間に達成したことに勇気づけられ、先行きを楽観的に感じました。このイベントの私なりの要約として、私は、小売業者が業界を再活性化の方向に進める方法として3つの行動を提言しました。

  • 実店舗にデジタルを導入。消費者が1年(あるいはそれ以上)にわたるステイホームでのデジタルコマース利用を経て実店舗に戻るのに合わせて、小売業者はそれまでに獲得したデジタルインテリジェンスと俊敏性を店舗での体験に統合する必要があります。それには、お客様が買い物をする場所が実店舗かオンラインかにかかわらず、シームレスで一貫したエクスペリエンスを小売業者が作り出さなければなりません。例えば、多くの小売業者が、店舗の営業や製品在庫に関する最新情報をデジタルチャネルで提供することに成功しています(ただし、まだ広く普及はしていません)。
  • 透明性をさらに強化し、より高い目標に合致する製品をより多く提供。過去6か月の間、小売業者はコミュニティや環境をサポートする積極的な持続可能性目標に取り組んできました。その取り組みには、カーボンニュートラルの実現、商品の包装削減や、供給業者に対しリサイクル素材をより高い割合で使用したパッケージへの変更を要求することが含まれます。小売業者は、提供する商品の持続可能性や、各社のCSR目標の進捗状況に関する透明性を一層強化しています。そして消費者は、この新たなレベルの透明性を歓迎しています。
  • オムニチャネルの全タッチポイントでパーソナライゼーションを強化。パーソナライズされた顧客体験は、小売業者にとって数年来の重要な目標でしたが、これは引き続き課題となっています。適切なコミュニケーション手段を通じて消費者の行動にリアルタイムで対応できるようにデータを管理する難しさを、小売業者は頻繁に感じています。データのプライバシー慣行の精査が求められ、規制がさらに強化されたことで、適切なデータガバナンス慣行が実施されていない業者にとって、パーソナライゼーションはさらに困難な課題となっています。

2021年半ばに新しい障害が出現

小売業者は上記の3つの戦略で発展を続けてきましたが、サプライチェーンの分断や、雇用可能な人材の不足など、ビジネス環境における新たに変化する問題に今でも直面しています。これらの障害は、小売業者の収益や利益の回復を妨げる恐れがあります。消費者の新しい購買行動を把握する方法を見い出すのに加えて、小売業者はこれらの新たな問題を軽減する方法も並行して見つけ出さなければなりません。

  • 従業員不足。現在、世界中の小売およびサービス業界は、従業員の雇用やその維持に苦労しています。例えば、昨年は必死に努力してようやく事業を継続できるだけの収益を得ていた地元のベーグルチェーンに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による制限が緩和された今では、お客様と注文が殺到しています。仕事は大量にありますが、高い人材需要や、ペースが速くストレスの多い職場環境が原因で、従業員の誘致や維持に苦労しています。労働専門家によると、長期的に発生しているのは労働力不足ではなく、労働市場の再構築です。英国では、春の終わりに求人が45%増加したと報告され、オーストラリア統計局は「27%の企業が適切な従業員の雇用に困難を抱えている」と報告しています。根本原因にかかわらず従業員不足は、より高い期待を寄せるお客様に対して優れた体験の提供に務める企業にとって大きな負担となります。
  • サプライチェーンの課題。昨年の春には、紙製品や咳止め薬、衛生用品の買い占めによる1回限りのサプライチェーン障害だと考えられていたことが、複数年にわたる課題へと発展しました。しかし、危機の初期とは異なり、これらのサプライチェーン障害は需要の急激な増加によるものではありません。現在では、コンテナやトラック運転手、および一般的なサプライチェーンの能力不足が、世界中のビジネスに影響を及ぼす新しい課題を生み出しています。最近の不足品は、スターバックスのパン類や砂糖の小袋、韓国のレストランのフライドポテト、そして世界中様々な場所にあるレストランでのテイクアウト用の袋など、一見ランダムに思えます。
「世界中の航空会社やレストラン、ホテルで求人を埋められず、復活した消費者の需要を収益化する取り組みの妨げとなっています。パンデミック下で離職した多くの労働者は、まだ造船所や工場、建設現場に戻っておらず、生産に打撃を与え、プロジェクトを停滞させています。」
- ジュリア・ホロビッツ、CNN、2021年6月

新しい課題の解決には、新しいアプローチが必要

小売業者の多くはこれまで、商品情報管理(PIM)技術を使用した商品データの管理を行い、データ管理の効率向上やデータの強化、商品データのプロセスや承認の視認性向上、物理チャネルやデジタルチャネルを通じた信頼できるデータの社内および消費者との共有など、様々なメリットを実現してきました。

しかし、データ要件が複雑化し、小売業者がより多くの商品属性や階層を管理し、その情報を正確かつ最新に保つ必要が生じるにつれ、限界に直面する可能性があります。商品、顧客、そしてロケーションに関するデータを混合する必要があるパーソナライゼーションの向上のような、前述の複雑な課題に小売業者が対応しようと望む場合、この限界は特に顕著になります。

所有するデータの能力を活用する新しい方法を模索する小売業者には、以下の機能を持つマスターデータ管理(MDM)が、そのニーズを満たす最適な手段となるでしょう。

  • サプライヤーデータの価値を最適化。商品データとサプライヤーデータを組み合わせることで、小売業者はPIMでの今までの実績を基盤とする商品MDMを構築できます。商品MDMを使うと、小売業者はサプライヤーベースに対してより堅牢なインサイトと視認性を構築でき、サプライヤーをより効率的にオンボーディングし、制御、理解できるようになります。これにより、主要な原材料や完成した商品の配送に遅れが生じた場合の柔軟性がより高くなります。複数のサプライヤーを用意して、紙袋や砂糖の小袋といった必需品の供給に備えることで、小売業者は、安価な業務上の必需品不足による顧客体験の低下が引き起こすコストへの影響を最小限に抑えることができます。
  • 最も重要な資源である従業員の価値を最適化。過去2年間で小売業者は様々な技術的な進化や運用効率を達成してきたにもかかわらず、従業員データの管理にはあまり焦点が当てられていません。しかし、継続的な成功には、それが不可欠です。従業員は、お客様に対面するブランドアンバサダーであり、お客様のロイヤルティと再訪を促進する重要な要素です。それを考慮すると、ビジネスの様々な面で従業員のスキルアップやクロストレーニングを行うことがますます重要になってきます。しかし、その障害となるのが、従業員のスキル情報を含む従来の人事データベースへのアクセスは容易ではないという点です。安全で一元化されたMDMシステムで従業員データを管理することで、企業は他のデータドメインに接続できるようになり、従業員のスキルやプロジェクト、希望するロケーション、その他の貴重な特性に関するインサイトを得られます。
  • ロケーションデータの価値を最適化。従業員データと同様に、小売店舗データには大きな価値があります。お客様と共有するためには正確なロケーションデータが必要で、これによりお客様は、店舗の住所や営業時間、連絡先情報、さらには店舗の特性などの情報を得られるようになります。社内では、店舗データを管理する堅牢なソリューションにより、販売促進の意思決定を行う際に社員の認識が一致していることを確認できると同時に、業務の効率性や出荷の正確性を確保できます。店舗の閉鎖や改装、ダークストアのイニシアチブなど、過去数年間にわたる様々な現象を考えると、信頼できる店舗ロケーションデータを、小売業者がビジネスパートナーおよび最終消費者の双方と共有できるようにすることが重要です。

データガバナンスにはマルチドメインMDMが必要

商品データのガバナンスを導入した小売業者は、プロセスの所有権や、従うべき反復可能な規則の作成、データセット全体に対する標準の確立などを含むプロセスを定義しており、規制や、アクセシビリティおよびセキュリティ規則の順守に役立っています。

小売業者がデータの成熟度を高め、ITアーキテクチャーを簡素化するにつれて、この同じガバナンスを前述とは異なるタイプのデータに拡張することが重要になってきます。Stibo SystemsのマルチドメインMDMを使用すると、小売業者は単一の統合プラットフォーム上で、サプライヤー、ロケーション、従業員、およびアセットに関するデータに対して同様のガバナンスルールとプロセスを確立できるようになります。

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様々なインサイト領域:異なるデータセットの共通部分で、重要な小売業のインサイトを明確化。

小売業者が業務効率のさらなる改善を実現するには、継続的で一貫したデータのガバナンスや管理、および実行が必要です。マルチドメインMDMの魅力的ながらあまり知られていない利点の1つは、一種類のデータでは得られない新しいインサイトを生成し、活用できることです。小売業の回復の妨げとなっている障害の克服に関連する、小売業者にとって重要ないくつかのインサイト(上の画像を参照)を見てみましょう。

  • インサイト#1:従業員データ × 商品データ = 商品知識

店舗の従業員全員のスキルセットを正確に把握すると、対応範囲の潜在的なギャップを確認できます。例えば、従業員の33%が食品取扱いの資格を持ち、調理場で働くことが可能でも、カフェで働くために必要なトレーニングを完了した人員は15%しかいないというケースです。それが、需要が増加したときや、複数の従業員が同時に休暇を取っているときに、お客様に提供できるカフェでのサービスの潜在的な隙間となります。このようなトレーニングギャップを埋めることで、小売業者は事業の弾力性を構築し、継続的な従業員の成長をサポートできます。

  • インサイト#2:従業員データ × ロケーションデータ = 従業員の適性

従業員データは、ロケーションデータと組み合わせると、どの従業員が別の店舗で働く適性を持っているかの概要を管理者に示すこともできます。これにより従業員は、第二のロケーションで勤務時間を増やすことが可能になります。また、従業員不足が特定の店舗に影響を与えることを回避したり、予想される需要の急増に対応したりする高い柔軟性も提供します。

  • インサイト#3:サプライヤーデータ × ロケーションデータ = 承認

小売店のバックルームは、一日を通して納入業者が訪れて店舗への直接配達を行うなど、非常に慌ただしく、混乱が生じる可能性があります。セキュリティの確保、盗難防止、商品の品質維持を実行するために、商品受け取りの担当者は、サプライヤーから特定のロケーションへの配送を承認されているのは誰かを明確に理解していなければなりません。承認システムを利用すると、すべてのロケーションへの安全なアクセスを保証する堅固な運用プロセスを確実に実行できます。

  • インサイト#4:ロケーションデータ × サプライヤーデータ × 商品データ = ローカライズした品揃え

お客様は、コミュニティをサポートする手段として、地元のサプライヤーからの購入を好みます。それは飲食品に関しては、商品がより新鮮で、しかも環境に与える影響が少ないことを意味します。商品サプライヤーのロケーションと店舗のロケーションを結びつけるデータは、小売業者に貴重なデータ基盤を提供し、地元の商品を販売促進するためのインストアマーケティングを活性化します。同時にお客様の登録店舗ロケーションに基づくWebサイトやアプリでの情報提供も可能になります。

これらは、マルチドメインMDMがデータの透明性を高め、小売業者がより多くの情報に基づいたデータ駆動型の意思決定を行って、人材不足やサプライチェーンの問題を克服するために有用な利用法のほんの一部です。マルチドメインMDMならではの特徴の詳細は、こちらをご覧ください。


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Brian ClusterはStibo Systemsの消費財および小売業界を担当するインダストリー・ストラテジー・ディレクターです。戦略の共同作成、分析の提供、ビジネスプランやデジタルトランスフォーメーションの構築などの分野で25年を超える経験があります。Stibo Systemsでブライアンは、多様な業界の専門知識を有効活用して、フィールドチームに方向性と戦略を提供し、マスターデータ管理ソリューションの顧客価値向上をサポートしています。また、ザ・コンシューマー・グッズ・フォーラムへ頻繁に寄稿しており、その記事はConsumer Goods Technology、Multichannel Merchant、Total Retail、Footwear News、Center for Data Innovationなどで公開されています。

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