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SAP S/4HANA ERPへのデータ移行―MDMによる迅速・安全なアプローチ

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4月 22 2022

複数の異なるERPシステムを集約してS/4HANAへ移行することは、さまざまなツール・膨大な人員・巨額の予算を必要とし、多大なリスクと数年の歳月を伴います。マスターデータ管理(MDM)は、そうしたリスクを軽減するだけでなく、データをS/4HANA向けに準備する過程で、企業が繁栄し、利益を享受できるようにします。


S/4HANAへ移行する間、新しいS/4HANAの導入が全面的に完了するまで、新旧両方の環境を稼働させなければなりません。MDMがあれば、この状況に最小限のリソースで対応でき、場合によってはリソースの削減さえ可能です。

SAP S/4HANA は、大企業向けに設計されたパワフルなERPシステムです。2015年に、SAP R/3やSAP ECCの後継として登場しました。このソフトウェアパッケージは、組み込み型のAI、アナリティクス、インメモリ機能、プロセス自動化を特長とします。

現在、数千社がS/4HANAを実装し、このERPの多くの利点を活用しています。しかし、S/4HANAの実装には、プロセスに関わる問題や、既存ERPインスタンスからデータを移行しなければならないなど、いくつかの難題があります。

パズルのピースがすべてそろったとしましょう。そこで御社はSAP S/4HANAへの移行を決断します。市場のERPを比較した結果、S/4HANAが自社にとって最適であると分かったからです。すでに予算とチームが用意され、組織が整い、チームの担当も決まりました。けれど1つ、欠けているピースがあります。それは「準備」「変換」「移行」「完結」という各工程に沿ってマスターデータを管理するためのアプローチです。

ワールドクラスのERPも、効果を発揮できるかはマスターデータ次第ですから、そこが弱点になることは避けなければいけません。

 

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異種混在のERP環境では、マスターデータの移行がいっそう難しくなります。

S/4HANAは、数千ものサプライヤー、商品、顧客を抱える複雑な大企業向けの優れたERPシステムです。大手多国籍企業は、各地での有機的成長、合併・買収、事業売却の結果、パッチワークのような寄せ集めのERPシステムとベンダーを抱えています。さらに国や地域が異なれば、歴史的事情により、マスターデータ管理のプロセス、手順、テクノロジーも異なるでしょう。こうしたことが、S/4HANAの実装を困難でリスクの大きなプロジェクトにしてしまいます。

異なるソフトウェアプロバイダーから調達した旧式のERPインスタンスが複数あると、マスターデータのレコードのコピーが複数存在したり(各ERPにつき1つずつ)、場合によっては、同一のサプライヤー、原料、顧客についてマスターデータが重複したり、矛盾したりすることさえあるでしょう。データ品質にも不備があるか、あるいはERP環境間で一貫していないかもしれません。

旧システムに分断されたデータにゾーン・オブ・インサイトを拓く方法については、こちらをご覧ください。

 

まずはマスターデータを管理する

一貫性のなさは、日常のオペレーションにとっても十分問題であり、効率を低下させかねません。問題は透明性の欠如です。例えば、ある全社共通のサプライヤー(またはそのサプライヤーの子会社)が、地方支社や社内の各部門と個別にやりとりしているとしましょう。これでは最適価格を獲得できない可能性が高くなります。さまざまなシステムで異なるサプライヤー番号を使用している場合、この問題に関する透明性をまったく得られません。また、同一部品なのに地域・国ごとに部品番号が異なっていると、ある国でその部品を取り寄せようとしているのに、別の国では余って廃棄するようなこともあるかもしれません。こうした状況は、売上と最終利益の両方に影響し、現在のグローバルなサプライチェーン問題の最中では、特に深刻です。


S/4HANAにクリーンなマスターデータを入力する

当然ながら、このようなマスターデータの問題を、新しいS/4HANAシステムで踏襲するわけにはいきません。そのためには、まずマスターデータを管理する 必要があります。具体的にはデータをクレンジングし、それらを照合・連結してゴールデンレコードを作成し、さらにそれらのレコードをS/4HANAに取り込めるように変換します。


旧システムのマスターデータを維持する

さらに、マイグレーションプロジェクト中も日常業務を継続するために、S/4HANAだけでなく、まだ移行を終えていない部門・地域の旧システムでも、マスターデータを引き続き維持するプロセスを用意しなければなりません。

高品質で、信頼できる唯一の情報源となるデータを伴わずにS/4HANAのマイグレーションプロジェクトを開始すると、予算、期限、適切な実装の面で、プロジェクトを大きなリスクにさらすことになります。

 

ERPマスターデータ移行の代表的なアプローチ:マスターデータの静的変換

かなり小規模なERP実装(単一の言語、国、工場向けなど)であれば、大量一括型のマスターデータの静的変換が現実的でしょう。まず数日間をかけて変換の予行演習を数回実施し、続いて週末を利用して変換を行うために、通常はその2週間前からマスターデータを凍結します。このアプローチは、複数地域にまたがる大企業やグローバル企業向けに大規模化することはできません。全社的にマスターデータを共有している場合、凍結つまり静的変換はサステナブルではないのです。そうした企業は、ビジネスを継続しながら、旧システムと新しいS/4HANA環境にわたって、マスターデータの同期を維持する必要があります。

そこで、マイグレーションプロジェクト中、旧システム間でマスターデータを同期させるために、一般的な静的変換手法では、大規模なドリームチームが必要になります。このチームはデータアナリスト、アーキテクト、開発者、各ビジネス分野のエキスパートで構成され、マスターデータの分析、開発、クレンジング、集約、検証を行い、続いてそれらのマスターデータをS/4HANAで利用できるようにマッピングし、変換します。かなり時間を要する重労働のプロセスであり、終盤ではおそらく、各マスターデータの変更について、時間をかけて繰り返し検証することになります。

S/4HANAの移行に必要なツールの数を減らす

典型的なSAPテクノロジー環境で実施されるSAP S/4HANAマイグレーションの多くは、前述の方式に従っており、そのためにSAP Data StewardやSAP Data Servicesを通じて、大規模なABAP開発が行われます。

ある電子機器の大手メーカーは、自社のマスターデータをS/4HANAへ移行し、管理するために必要なSAPツールを数えたところ、30種類以上あったそうです。

 

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静的なマスターデータ変換:ビジネスアナリスト、開発者、アーキテクト、各分野のエキスパートから成るデータ移行チームは、S/4HANAへの移行中、旧システムのマスターデータの同期を維持しなければなりません。さまざまなツールやサービスが必要になります。

 

コーディングではなく、コンフィギュレーションを

移行後のSAP環境の保守には、S/4HANA MDG(Master Data Governance)を使用することができます。ただし、SAP MDGはERPソフトウェア専用のマスターデータ管理ツールのため、ご想像どおり、たいていはSAPのマスターデータをサポートするためだけに導入されます。それ以外の(つまりは旧システムの)データモデルをサポートするには、かなりのカスタマイズが必要であり、よって行われたとしてもまれです。

コンフィギュレーション可能なマスターデータ管理ソリューションを使用すれば、設計・開発作業を大幅に軽減することができ、マスターデータが変更された時も、それを例外として管理することができます。

 

ERPデータ移行中および移行後のマスターデータ・ガバナンス

静的変換のもう1つの問題は、次に何が起きるかです。顧客、サプライヤー、原材料、財務の新しいマスターデータは、常に流入するため、それらが既存データと重複しないようにしなければなりません。マイグレーションプロジェクト中もビジネスは継続するため、旧システムと、段階的に展開されるS/4HANA間で、一貫性を維持する必要があります。

マスターデータが絶えず変化していることは、実装時の大きなリスクであり、移行作業が終了しても、マスターデータの継続的ガバナンスが必要になります。新旧システムの両方にデータを入力するという方法もありますが、それでは非常に手間がかかるうえ、間違いが生じやすくなります。前述のように、ERP専用のデータガバナンスツールで行うことも可能ですが、それには膨大な「使い捨て」コードが必要でしょう。

マスターデータ管理(MDM)ソリューションが、そうしたリスクを緩和し、付随する人件費を削減します。MDMはデータ品質を保証し、プロジェクトの進行過程ですでにビジネス価値を実現します。実装の全面完了を待つ必要はありません。

マスターデータ・ガバナンスについて詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

 

 

 

MDMが支援するERPマスターデータ移行の新たなアプローチ

S/4HANAへの移行は、段階的に実施され、完了まで数年を要することもあるため、進行中はマスターデータ管理によって、事業継続性の面で大いにメリットを得られます。

S/4HANAへの移行中、プロジェクトと並行して、企業は休むことなく、移行完了までS/4HANAと旧ERPの両方でビジネスを動かし続ける必要があります。

複数のデータドメインやデータモデルを管理できるMDMソリューションであれば、S/4HANA ERPへのデータ移行のリスクを緩和でき、さらに既存データの変更を管理するのにも役立ちます。

この大事業を成し遂げ、S/4HANAで最新情報を確保するためにマルチドメインMDMを使用することには、いくつかの利点があります。

迅速な価値の実現

MDMは、既存データの同期化を容易にし、企業がS/4HANA向けにゴールデンレコードを構築できるよう支援します。ビルトインのデータガバナンス・ワークフローを活用して、データをクレンジングし、レコードの重複を排除できます。しかし、最も重要なことは、コンフィギュレーションを通じて複数のデータモデルをサポートできる独立系MDMソリューションは、複数のシステムやベンダーにわたって、数多くのデータモデルを管理するのに役立つことです。つまり、移行処理に必要なツールや人員を減らし、結果として、コストと価値実現までの時間の両方を大幅に削減します。


データ移行中のビジネスオペレーションの改善

マルチドメインMDMシステムをマスターデータ・リポジトリとして使用することで、国や事業部ごとのデータセットの移行がより容易になります。

継続的にデータクレンジングが行われるため、移行プロジェクト進行中も、日常のビジネスプロセスに最新のマスターデータやゴールデンレコードを活用することができます。まさに、S/4HANAの稼働開始を待つことなく、クリーンなデータのメリットを享受できるのです。 マスターデータを同時に管理することで、予定を前倒ししてサプライヤーの最適化、コンプライアンス、サステナビリティなどの施策に着手したり、S/4HANAに向けて準備しながらサブプロジェクトを開始したりできます。

  • MDMは、変換後、データを基本的に保守不可能なファイルに格納するのではなく、それらを管理できるようにするコンフィギュレーション可能なツールセットを提供します。
  • MDMは、データ品質の保全、データの連結、統合、分離、重複排除などのために設計されたソフトウェアパッケージであり、マスターデータを管理するためのさまざまなコードを記述する手間を省きます。
  • MDMでは、S/4HANAと旧システムの両方のマスターデータを同時に管理できるため、保守やデータ入力の二度手間を省きます。
  • 移行完了時だけでなく、途中の全工程を通じてクリーンなマスターデータにアクセスすることで、サプライヤーの合理化、仕入れ交渉、在庫部品の可視化などのビジネスメリットを継続的に享受できます。
  • 将来が保証されたデータ保守:ゴールデンレコードの作成だけでなく、MDMには、新たな項目を既存データと比較して検証および照合できるオンボーディング機能があります。柔軟なデータモデル、論理的な階層構造、ビジネスルールに基づくワークフローを通じて、データガバナンスをサポートし、企業がS/4HANA実装後も、常に高いデータ品質と最新のゴールデンレコードを維持できるようにします。

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MDMに支援されたマスターデータの変換:MDMは、旧システムの同期を維持しながら、S/4HANAにゴールデンレコードを供給します。

 

MDMをSAP S/4HANAと併用する継続的なメリット

S/4HANAへのERPデータの移行は大事業になるでしょう。一般的には、多くのコーディングを伴う多数のツールが必要です。ほとんどの場合、新しいデータを管理するために、プロジェクトの終盤になってから、SAP MDGが導入されます。

より収益性があり、よりリスクの少ないアプローチのためには、MDMソリューションをプロジェクト早期に導入することです。Stibo SystemsのMDMソリューションは、コンフィギュレーション可能で、コーディングは不要、そしてプロジェクトの進行中と終了後にわたって、データを格納し、保守するための場所を提供します。

MDMでは、すべてのデータドメインを管理できます。データを、例えば取引先、営業システム、規制システムと共有するのに適したものにするために、サードパーティのソースへ接続して、データのリッチ化、翻訳、蓄積に対応することができます。

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ジェフ・ディーンは、Stibo Systemsのデリバリー戦略アライアンス&バーティカルマーケット担当バイスプレジデントです。これまでに多国籍公開会社、コンサルティング会社、ソフトウェアプロバイダーで、開発者、アーキテクト、エグゼクティブ、ストラテジストとして、幅広い経験を積んでいます。Stibo Systemsや他社製のMDMソリューションの大規模な導入を数多く管理した経験があります。さらにERPソリューション、その他のパッケージソフトウェアやカスタム開発アプリケーションを納入した経験もあります。現在は、Stibo Systems アライアンスグループでデリバリー戦略を指揮しながら、お客様にビジネスや技術的なコンテキストを提示し、パートナーの実装をサポートすることに注力しています。

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